Art Works Ushio Sakusabe サクサベウシオ

Floating Stone 2008

浮石 2008
ZAIM(旧関東財務局) / 横浜市、神奈川県
自然石(大 約900kg、中 約500kg、小 約200kg)ステールワイヤー、鉄筋
h12m x w7.5m x d10m

Another Angle

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  • 美術ジャーナリスト 村田 真

パラドサクサベ
サクサベウシオは近年海外での発表が増え、また国内での発表も、人里離れた不便な場所で行われることが多いせいか(そのことが作品の性格を物語ってもいる)、私はここ10年ほど彼の作品を見ていなかった。といいつつ、実は最近見た唯一の作品があるので、それについて書くしかないだろう。

それは、私も入居している横浜のZAIMに展示された《浮石2008》である。
(2008年に設置され、2009年に撤去)。ZAIMは旧関東財務局の建物を文化芸術に再利用した施設で、おもにクリエーターたちの共同スタジオ(本館)と展示スペース(別館)の2棟からなっている。その2棟のあいだの幅6メートルほどの空間に、3つの石をワイヤーで吊るしたのだ。

その吊るし方がなかなか考えられていて、道路側から見ると(つまり斜め下から見上げると)、石が手前から小、中、大の順で一直線上に、しかも徐々に高くなるように並べてあるのだ。したがって道路上のある1点から見れば、3つの石が「惑星直列」のように重なって見えるというわけ。さらに厳密にいえば、
奥の石は手前の石にすっぽり隠れることなく、ちょうど「金環食」のように少しずつはみ出して見えるように配置されている。つまり逆遠近法的な視覚トリックが応用されているのだ。このように説明しただけで、この作品がいかにコズミックな構造を擁しているかがおわかりいただけよう。

しかしこの作品、石の重さだけでも計1.6トンもあるというのに、文字どおりビルの谷間に宙吊りにされているせいか、「そこにある」と言われなければだれも気がつかない。おそらくZAIMの入居者にもその存在をあまり知られていなかったのではないだろうか。

それは単にビルに隠れて気づかれなかっただけでなく、あまりみんなに知られたくない事情もあったのかもしれない。なぜなら、この石の下が屋根つきの駐車場になっていて、万一石が落下したら確実に屋根を突き破り、とんでもない事態に陥っていたはずだからだ。だいたいこの建物は老朽化が問題になっており、どこでどうワイヤーを固定したのか知らないけれど、かなり危なかったに違いない。そう思わせる作品だが、実はそれがサクサベの意図だったのだ。
つまり、危険性はないのにあえて危険だと思わせ、みんなの注意を喚起することが。いずれにせよ、みんなに知られれば撤去されたかもしれないが、知られなければ存在し続けたかもしれない。この事態を、次のようにいいかえられるだろうか。見ようとすれば見られなくなり、見ようとしなければいつまでも見られる、と。これは現代物理学の量子論における「観測問題」にも似たパラドクスである。サクサベはそこまで意図したのか。
* パラドサクサベ=パラドクス+ドサクサ+サクサベ

美術ジャーナリスト 村田 真

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