Art Works Ushio Sakusabe サクサベウシオ

FLOATING STONE CIRCLE - Try to Overcome the Gravitation 1996

浮石環 - 引力圏から逃れるために 1996
ブルククロスター美術館/リューベック、ドイツ
自然石、スチールワイヤー、木枝、針金
h6m × w15m × d15m

Another Angle

Press

  • リューベッカー・ナッハリヒテン紙 1996年5月4日発行
  • フレンスブルガー・ターゲスブラッド紙 1996年5月8日発行
  • リューベッカー・ナッハリヒテン紙 1996年5月6日発行

Comment

  • ハンブルグ近代美術館主任学芸員
    イエンス・ホゥヴォート

重力から逃れる試み
‐ ブルグクロスターにおける作左部潮の展示作品 ‐
ハンブルグ近代美術館主任学芸員
イエンス・ホーヴォート

 

カール・ゲオルク・ハイセは、リューベック市街の歴史地区に初めて現代彫刻を展示し、人々の注目を集めた最初の人間であった。およそ70年前には、レンガ造りのゴシック建築が生み出す直線的なプロポーションの前に、スエーデン人、カール・ミレスの表現主義的な彫刻が展示された。この夏は日本人芸術家の作左部潮が、どちらかといえば地味な建造物であるブルグクロスターの中庭を、空間を捕える自身の作品の舞台として選んだ。14世紀に造られた回廊で四方を囲まれて隔絶されたこの空間の放つオーラは、日本人の瞑想的作品にはまさに打ってつけであった。すなわち、彼の展示作品に求められる「何物にも妨げられない体験」がここでは可能なのである。この芸術家は、この建造物の調和のとれた一様性とこの場所の飾り気のない対称性に刺激を受け、2年前にここを作品の展示場所として選んだのである。
ブルグクロスター博物館館長との綿密な打ち合わせにより準備が行われ、樹木の枝などの調達にあたっては公的機関の支援も受けて、作品は完成された。

 

作左部潮(1954年生れ)は、東京造形大学と多摩美術大学で彫刻を学び、日本や環太平洋地域では70年代終わりから作品を発表し、その名を知られている。ドイツでは、1993年のエンデホルツでの野外展示を皮切りに、その翌年にはトリッタウ水車小屋美術館で個展を開催している。

作左部が作品で使用する材料の種類は少ない。石、枝、綱、ワイヤー、そして時々竹や布も使用している。作左部は常に自然のままの形の素朴な石を使って、作品のコンセプトを表現しようとしている。すなわち重力を自覚させ、同時に美的な造形物により無重力を表出する事である。作左部はこのコンセプトで、既に数々の作品を創作している。

 

ブルグクロスターでは、鑑賞者の頭上高くに張りめぐらされたワイヤーに12個の石が固定され、それらが環を形成している。この石の環は、作左部の到達した完成度と高度な明快性を顕著に表している。この作品ではまず、空中に浮遊する石に感銘を受けた。作品に近づき真ん中が空洞になった構造物に足を踏み入れると、静的な構造がもたらす均衡と調和が前面に出てくる。
石、ワイヤー、枝の配置が均衡を生み出し、重量と緊張が形状的な調和を表出する。作左部は、時代を超越した「完全無欠」の象徴である環を、自然のままの材料が持つ自由な秩序の原理へと発展させた。「浮遊する」石や、華奢な枝の上に置かれた石は、アルテ・ポーヴェラの手法を想い起こさせる。さらに、厳格な構造や拘束力のある形状を持つ作左部の作品は、偉大な精神的背景を示唆している。岩石は太古の昔から存在する材料であり、地球の年齢を示す証拠であり、ダイナミックな宇宙の発展の記憶でもある。カスパル・ダヴィッド・フリードリヒのロマン派の絵画には、この考えが効果的に描かれている。この絵の中では、海上に浮かぶ花崗岩が永遠の時間を象徴している。石は描くことができないパワーの象徴となっている。作左部がブロートナー海岸で集めた石にゲニウス・ロキ(地霊)の影を見るのは、いささか行き過ぎであるかもしれない。日本庭園を思い浮かべただけでも、日本の文化では自然の岩石が生来の独自の象徴的な意味を持つからである。そこでは、在りのままの自然物が様々に象徴化されている。この事は、作左部の材料との関係にも影響を与えている。従って彼が、「重力から逃れる事」で宇宙的次元を示唆しているのも決して偶然ではない。石はまるで無重力空間を運行する惑星のように見える。惑星の動きは実際の重力の法則に基づいているが、作左部は浮遊する無重力の動きを隠喩の形で表現している。ワイヤーで固定された石がバランスを保つ位置、それが芸術的な構造物を形成し、同時に鑑賞者に美的経験をさせてくれる対象物ともなっている。

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